2009/11/16

秋、社会、青年

 ひざの上に上がって心地よさそうにまるまっている猫、その暖かさ、手ざわりが嬉しい季節になりました。早や1ヶ月が過ぎ、もう11月、秋が深まって来ました。各地の紅葉のニュースを見ると、心が騒ぎます。

 でも、社会は慌ただしく動いており、政権が変わって、みんなの期待の方向に進むというわけではなく、絶えず、ぶつかり合い、拒絶などの場面を見ると気が重くなります。

 経済支援が貧困に苦しむ人々をすくい上げてくれること期待しましたが、そう簡単ではなく、将来の見通し、安心して過ごせる見通しはあやふやなもので、不安を感じてしまいます。

 道草の家に時々来たり、電話で関わっている青年、母子家庭で母親は余り働けず、彼が何とか働かなければならない、精神的な不安定さを抱えながら必死に働いているのですが、やはり将来の不安はぬぐいようもありません。時給の安い職場で、年金も払う余裕もないまま、将来年金ももらえるわけではなく、でも「先のことを考えると不安でたまらない、でも考えても仕方ない。一日一日できることをやるしかない。できることで働くしかない」と言っています。私はせめて彼の話を聞くしかないのですが。

 日本は経済的に豊かな先進国の上位にありながら、貧困家庭が増え、病院に行かれず、学校の保健室で治療してもらう子供たち、食事も給食一食でしかとれない子供たちのニュースを聞くにつれ、社会の矛盾を感じます。

 スウェーデンなど北欧の国々は、教育費、医療費が無料で、老後のことも保障されています。それは、給料の多い人が税金の率も高く、給料の少ない人の分を補う形で保障は皆平等に受けられる――ということのようです。

               微妙な心

 「どこで間違ったのだろう」・・・と自分の生き辛さは、思うように働いて十分な収入を得て、安心して生活できる、とは程遠い今の生活、職場などでの人づき合いも、いつも自信がなく、気軽に話せる友だちがいない、今・・・「どこで、方向が違ってしまったのだろう」と思う青年がいます。

 また、精神的に不安定で辛く、自由に外出もできない状態を「自分が悪いのだ、過去にもっと人と関わる生活をしていたら」と人を、家族を、社会を責めることなく、耐えている青年もいます。

 道草の家に参加する青年たちは心の苦しさを抱えています。その程度、症状はそれぞれですし波があります。でも広い意味で社会に出ている青年たちは自信を持ち、心豊かに生きているかと思うと、そういう人は少いように思います。国際的な青年意識調査が時々あり、何年か前にそれを読んだことがありますが、正確には覚えていませんが、「自分に満足している」「将来に夢がある」「人の役立ちたいと思う」などにYESと答えた日本の青年は、他の国に比べて、非常に低かった!経済的にも文化的にも発展している日本なのに!と思います。

 子供の頃から、「それでいいのよ」「よくやってるね」というような、その子を肯定するような言葉かけが、親や教師やまわりから少かったのでは?そして、子供の気持を大人の方からたずねることも少かったのでは、と思います。おとなしい子はおとなしいなりに、学力が遅れてる子はそれなりに、受けとめ、「一緒に遊ぼう」「一緒に学ぼう」という雰囲気がなかったのでは?経済成長重視と同じように、子どもたちにも「努力」「頑張る」「競争」「効果」を重視して来たように思います。

 父親は“仕事一筋”が評価され、家族、子供と交わる余裕がなく、母親はそれを支えるのに精一杯、子どもの微妙な心、繊細さを理解できなかった――ということもあったのでは。

          心豊かに過ごしたい

 青年たちは、心の苦しさを抱え、波もありますが、青年の集いの時はなごやかに話をしています自分の悩みを聞いてほしい時もあり、嬉しかったことを話したり、好きな音楽を話したり。そして自分の好きな曲のMDなどを持って来てみんなで聴いています。

 私など音楽にうとい方なので「こんな曲もあるのだ」と、世相を反映したり(社会の矛盾を訴えたり)、人生の不条理を訴えるような曲だったり…癒される感じのもの、元気づけられるもの、「共に生きよう」というメッセージを感じるもの…様々で、心が豊かになります。

 そして、青年(今は女性ですが)たちに誘われて美術館や画廊めぐりをすることも楽しいひと時です。9月はディズニー映画の原画を描いたメアリーブレアの原画展を見に行きました。10月は銀座のポーラミュージアムで、世界の大画家の絵を見に行きました。(ゴッホ、ピカソ、モネ、セザンヌ、シャガールなど数は少ないですが、無料で見られ、得をした感じでした)そして銀座を歩いていた時に個展の看板があり、「面白そうね」と入ってみたものも、結構面白いものでした。

 家にずーっといて、道草の家に来始めて2年位になる青年、映画館に行ったことも美術館に行ったこともなかったが、この頃、そういう所にも行きたい気持になった、――と言います。世の中には、面白いもの、楽しいもの、美しいものがあることに目覚める機会になれば、と思います。

 和田ミトリ