2012/04/03

春・・・?

  4月になってようやく春の暖かさが訪れましたが、桜の花が街路を飾ることはまだまだ先のようです。でも道を歩くと家の庭に咲いた水仙がフェンスの間から何本も顔を出しておじぎをしています。

 これから沢山の花が咲き出すことを思うと、胸がふくらむ思いになりますが、東北にはまだまだ春はやって来ない、課題は山積みされたままです。

 道草の家で関わっている青年たちにも「春はまだ・・・」と思われる青年が何人もいて、心が痛みます。なぜ悩み苦しまなければならないのか、なぜ自己否定感がそんなに強いのか、と考えてしまいます。他の時代、他の土地に生まれたら、こんなに苦しまなくてもいいのに!とも思います。

 今の日本社会、混沌とした文明社会、繊細な心を持つ青年たちが、その影響を大きく受けたのではないか、と思います。

「文明とは何か」―宇宙からの視点で

  「これまでと同じ速度で人間圏を営み続ければ、もはや我々の人間圏は100年も存在できないかもしれない」という言葉を本の中で読んで、私たちはそんなに悠長にしてはいられない、と思いました。『我関わる、ゆえに我あり―地球システム論と文明』(松井孝典著、集英社新書)という本ですが、「私たち人類、地球の緊急課題は宇宙からの視点、地球を俯瞰することで解明される」と述べています。「人間とは何か」「文明とは何か」を問い直しています。

 地球システム論で文明を定義しており、地球に生命ができ、生物圏に人類が生まれた時から現在までを4つの図で描いているのを紹介します。

図1―人間圏が他の圏と一緒に地球システムの中に収まっていいる、狩猟採取時代

図2―人類が生物圏をとび出し、新たに人間圏を作った、初期の農耕牧畜時代。調和的で構成要素が円に収まっている。

図3―「文明の惑星」は産業革命以降のストック依存型(石炭石油を使う)の文明の

時代、現代。地球システムを大きくはみ出す

ことによって地球システムに大きな乱れが生じて来る。

図4―21世紀の地球システム。これまでの人間圏の発展をそのまま延長した場合の圏。人間圏と地球システムの関係は非常に不安定になる。

 現在の状況は図3から図4の状態への過渡期、様々な問題を招いているわけです。

 そして、今回の大震災を機に(被災地の復興は当然だが)、「復元」ではなく、地球システムと調和した新たな人間圏の「創造」、新たな文明の「創造」を考えるべきだ――と述べています。

 未来の人たちのことを考えれば――考えなければ、今の自分たちのことだけでいい、と思えば、別ですが――今の文明をどう考えるか、どう変えて行くか、どう「創造」するか、を考えるべきでしょう。今の文明にどっぷり浸かっている私たちには非常に難しいことですが。「このままの経済政策では他の国に負けてしまう」と言う人もいますが、他の国に勝つ、負けるの問題ではなく、人類、地球の存亡の問題だと思います。

 でも、著者は、「人間は、他との関わりの中で問うていく存在」だと述べています。地球システムの中の他の圏と関わりながら考えることができる存在、それは人間が存在する意味である、と言うのですが・・・

アイヌの人たちの生き方

 新しい文明の「創造」――なかなか見当がつきませんし、狩猟採集の時代に戻るわけにも行きません。でもその要素を持っている人たちの暮らしはあります。



 先日はテレビでブータンの生活が放映さえていましたが、道路を作る時に山にトンネルを作れば短距離になるのに、それをしない。なぜなら「自然を傷つけたくない。そのまま大切にしたい」と言ってました。

 そして、千葉県君津市の山奥に、アイヌ民族の長老が暮らしており、カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)という施設がある―という新聞記事を読みました。その長老の浦川治造さんの生活、生き方を追ったドキュメンタリー映画が上映されているのを知り、観に行きました。北海道に住む先住民族アイヌのことは多少興味を持っていましたが、改めて、現在もその伝統を守り、それを伝え続けていることを知りました。

 北海道のアイヌの村は、内地から多くの人が移住して来たり、国の政策によって、だんだんと、浸食されて行き、”先住”なのに偏見も受けました。治造さんも生活のため東京に出て様々な仕事をして来ましたが、同時に、出身地の北海道や千葉県のカムイミンタラの他、全国各地に、アイヌ民族の伝統を伝える施設を作りました。

 アイヌとして生まれ、育ち、今もアイヌとして生きる治造さんの暮らしに常に自然と共にあり、先人から受けついだ知恵、生き方が描かれ、自然を敬い、自然への感謝を忘れない・・・動植物や自然現象などに「カムイ」が宿っているという”自然に生かされ、自然と共に生きる”姿が現実にある、ということを知り、感動しました。

 そうした生活を、私たちがすぐ出来るわけではありませんが、それを実際に見たり接することは、何かを感じるのではないか、と思います。私の幼い頃は薪でご飯を炊き、風呂をわかし、暖炉裏がありましたが、今の青年たちには想像もつかないでしょう。でもカムイミンタラでしばし過ごすことは、心が癒され、生きるヒントがわずかでも得られるのでは、と思います。



カムイと生きる(パンフレットより)
天から役割なしに 降ろされたものは ひとつもない
それは アイヌに伝わる言い伝え
この大地に生きるものすべて
空や大地や水との関わりなしに
生きることはできない
人間より”力”のあるものが
カムイである
火のカムイ 山のカムイ 川のカムイ 風のカムイ
 (以下略)