2008/04/01

春、NPO法人として出発



 道端の空地やコンクリートの小さな割れ目にも雑草が青々と繁り、道草の家の庭の雪柳もまっ白な花をまばゆく咲かせています。春ですね。まだ肌寒い日もありますが、暖かくなっていく春、嬉しく感じます。

 でも、進学、就職の時期でもある3月4月は、青年にとっては動揺し、落ちこむ季節でもあります。「このままでいいのだろうか」「このまま1年が過ぎてしまっていいのだろうか」「年齢も若くないし」・・・などと思い、焦りを感じます。でも「実際に働く自信はない」「大学も通えそうもない」・・・落ちこんでしまう。そして、社会に出ている人たちと比較してしまい、自分には未来はないかのように思ってしまう・・・何とかこの時期を乗り越えるよう、本当に、身心にエネルギーが出て、自信も出てくる時が来ることを伝え、支え合いたいと思います。

NPO法人として

 2月29日、千葉県から特定非営利活動法人(NPO法人)が認証され、3月11日に法人の登記も済みました。
 NPO法人を願ったのは、任意団体としての活動では、個人の負担も大きく限界があるので社会的な信用を得て、幅広い活動をしたい、そして幅広く寄付やボランティアを受け入れる体制を整えたい、という思いからです。

 “気をひきしめて”とは思いますが、急に“活発に”というわけにも行きません。ただ理事、監事の方が、知恵を出して下さり、支えて下さる――心強さも感じます。また、年会費を送って下さったり、有形、無形に応援して下さる皆様がいらっしゃることも、大きな支えです。(行政からは、特に助成はありませんので、今まで以上のご協力をお願いします)

 先日、理事会を開き、今後の活動について話し合いました。パンフレットやホームページを新たにするのを機会に、道草の家の目的、目ざすものを、もっと明確にして、(ひきこもる青年の居場所は他にもあるので、その違いをはっきりさせて)居場所をもとめている人や関わりのある人に分かるようにした方がいいと話し合われました。

 道草の家の活動の目的としては、「生きることの根幹、社会に生きるための土台作りに重点を置く」(その結果として、就労、学校復帰に進む――ことを望みますが)ということになりました。
 具体的な活動目標としては、相互に関連がありますが、次の4つがあると考えます。
1. 自分への信頼(自信)と他者への信頼、人間信頼の回復。
 青年たちは過去の様々な体験から自信を失くしています。スタッフや仲間からの肯定的な関わりの中で、自信がついたり、人に対する信頼も生まれてくると思われます。
2. 生きることの楽しさを感じる。楽しむことを見つける。
 楽しむこと、好きなことをすることは、自分が好きになり、生きるエネルギー、前に進む意欲につながると思います。
3. コミュニケーション能力をつける。
 人間関係には、社会で生きるにはコミュニケーションが必要です。仲間などの交流の中でそれぞれの表現のし方で、自分の思いを伝えたり、聞いたりコミュニケーションができるように。
4. 自分らしい生き方がある。
 社会一般の人(普通の人)にはなれないのではないか、人と比較して自分を卑下しがちですが、自分の個性を大事にする生き方を見つけてほしいと思います。

成長、依存、失敗の保証

 「大人側からみた思春期以前の子供の人権と尊厳を守ることは、成長の保証、依存の保証、反射的な行動の保証(失敗が許される)を大人が与えること」だという文を読み、本当にそうだと思いました。(「つらい子どもの心の本」赤沼侃史著、白日社)

 子供は一人では生きられない存在ですから、依存は十分保証されて、先月号でも書きましたが、「人から認められない、愛されたい、大事にされたい」要求が満たされる必要があります。また、失敗しても、主体的に行動することで成長すると言えますから、失敗が許される保証も大事だと思います。親が期待する“いい子”になり、「失敗しないように」日本人の昔からの価値観でもある「人に迷惑をかけないように」という親の思いを受けとって、人に気配りし、自分を抑えたり我慢したり過ごして来て、いじめに合っても、親にも言わず我慢する。そして不登校になってしまった自分を“悪い子”と責めてすまう。大人になっても働けない自分を「許せない」と責めてしまう・・・。

 失敗が許され、親やまわりから「大丈夫だよ」と言われて育っていれば、生きることに、行動することに、社会に出ることに、そんなに不安や怖れを抱かないでしょう。
 今、社会に出られない青年たちも、思春期以前の子供としての人権を、同じように保証され、育ち直すことが必要な場合があるように思います。

和田 ミトリ